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最終更新日:2021/09/27(2017/02/27公開)

フランク・ロイド・ライトの生涯と建築物

フランク・ロイド・ライトの生涯と建築物

フランク・ロイド・ライトをご存知でしょうか。
ライトは19世紀の終わりから20世紀半ばまで活躍した、
アメリカを代表する建築家です。

フランク・ロイド・ライトは、日本では旧帝国ホテルを設計した建築家として知られ、本国アメリカでは1000棟以上の建物を設計しました。

今回はライトの波乱に満ちた生涯や、日本で見られるライトの建築物をご紹介します。

フランク・ロイド・ライトの生涯

近代建築の三大巨匠の一人に数えられるライトは、1959年に91歳で亡くなるまで、数多くの建築に携わってきました。
代表的な建築物と共にその生涯を振り返ってみましょう。

プレイリースタイルの提唱

ライトはアメリカ中西部のウィスコンシン州で生まれました。
大学を中退後にシカゴへ移り住み、建築家ルイス・サリヴァンの下で住宅の設計を行い、1893年に独立して事務所を構えます。

当時のアメリカではヨーロッパの模倣をした建物が主流でしたが、ライトの師であるサリヴァンはアメリカ独自の建築を目指していました。
ライトもその影響を受け、アメリカの風土に合う「プレイリースタイル」の家を提唱しました。

「プレイリースタイル」はアメリカ中西部の平原地帯と調和するデザインで、地下室や屋根裏部屋を無くして屋根を低く抑え、連続する窓で水平線を強調したり、部屋を細かく区切らないなどの特徴があります。

タリアセンの建設

住宅設計で評価を得たライトですが、妻子がありながら施主の妻と不倫関係になり、ヨーロッパに駆け落ちするという事件を起こします。
このスキャンダルで名声は地に落ち、設計の依頼も激減してしまいました。

2年後に帰国したライトは、故郷ウィスコンシン州の片田舎に、母親の家と自邸、弟子たちとともに働く設計工房や宿舎を建設しました。これらの住居や工房は「タリアセン」と呼ばれています。
後に冬の寒さを避けるため、温暖なアリゾナに冬用のタリアセンを建設し、季節によって移動するようになりました。
現在でもライトの建築を学ぶ学生たちがタリアセンで共同生活を送っています。

帝国ホテル新館と日本の影響

少しずつ設計の依頼が増えてきたライトですが、使用人が家族や弟子を惨殺するという不幸な事件が起こります。
その頃に依頼されたのが、日本の帝国ホテル新館の設計です。
1913年から度々来日して設計を進めましたが、1923年の完成を見届けることはありませんでした。

ライトはマヤ文明の影響を受けた時期があり、帝国ホテルの装飾にもマヤ文明を連想させるデザインが残されています。

来日した際に浮世絵の虜になったライトは、浮世絵の熱心な収集家としても知られるようになりました。
ライトのデザインには、日本の影響を受けたものが少なくないと言われ、建物の屋根や細部に日本的なモチーフが使われているほか、折り紙にヒントを得た「オリガミチェア」という椅子もデザインしています。

ユーソニアンハウスの考案

1930年代後半には「プレイリースタイル」をさらに進化させた「ユーソニアンハウス」を考案しました。

新しい建設方式によって造られた手ごろな価格のコンパクトな家で、アメリカの中流家庭に広まり、全米に多くのユーソニアンハウスが建てられました。
ユーソニアンハウスは、三角形、六角形、五角形などを設計のモチーフとしているのが特徴です。
中にはベッドまで六角形で作ってしまった例もあり、ベッドカバーを特注しなくてはならなかったそうです。

ライトはしばしば予算をオーバーし、工期を遅らせて施主を困らせるなど、自分の道を曲げなかったといいます。
そんなライトですが、建築の世界に残した業績はとても大きく、「設計の原点」とも言えるような住宅を多数設計し、今でも世界中の建築家に影響を与えています。

日本で見られるライトの建築物

日本びいきで知られるライトは、日本でも多くの建築物を設計しました。
ライトが設計し、実際に建てられた建築物のいくつかは、今でも見学することが可能です。

自由学園 明日館(みょうにちかん)

ライトと弟子の遠藤新の共同設計で、自由学園の校舎として建てられたプレイリースタイルの建物です。
自由学園が東久留米市に移転してからは、主に卒業生の活動に利用されてきました。

明日館は1997年に国の重要文化財として指定され、建造物を使いながら保存する「動態保存」の文化財として、公開講座や結婚式、コンサートなどに活用されています。

住所:東京都豊島区西池袋2-31-3

自由学園 明日館

明治村 旧・帝国ホテル正面玄関

帝国ホテル新館は、ライトが設計し、遠藤新が引き継いで完成した建物です。
落成記念披露宴のその日に関東大震災に見舞われましたが、周囲の建物が倒壊するなか、ほとんど無傷で堂々と建っていたそうです。

1968年に建て替えが決定し、中央玄関が明治村に移築されました。
この中央玄関は、幾何学模様の彫刻が施された大谷石、櫛目の入った優美なレンガなど、帝国ホテル新館の特色をよくあらわしています。
メインロビー中央の吹き抜けを中心とした空間に身を置き、当時の雰囲気を味わってみたいものです。

住所:愛知県犬山市字内山1番地

明治村

ヨドコウ迎賓館(旧・山邑太左衛門邸)

ヨドコウ迎賓館は、帝国ホテルの設計依頼を受けて来日したライトによって、灘の酒造家である山邑家の別邸として設計されました。
実施設計と監理はライトの弟子である遠藤新と南信に引き継がれ、1924年に竣工しました。

1947年に淀川製鋼所(現・ヨドコウ)の所有となり、1974年には国の重要文化財に指定されました。調査工事、保存修理を経て、1989年からヨドコウ迎賓館として一般に公開されています。

ライトが設計した建築物としては、日本に完全な形で現存する唯一の作品です。一見の価値ありですよ。

住所:兵庫県芦屋市山手町3-10

ヨドコウ迎賓館

近代建築の三大巨匠の一人と呼ばれる建築家フランク・ロイド・ライトについてご紹介しました。

波乱万丈に満ちた生涯の中、最期まで携わってきた数多くの建築は、今なお多くの人に愛されています。

今回ご紹介した日本での作品も、長い年月を経ても変わらない良さを感じられる名作です。機会があればぜひ一度ご覧になってみてください。

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