能登半島地震 被害調査から考える[1] ― 地震に強い家・地震に弱い家

地震と建物を考える

2024年5月27日に私どもの事務所よりすぐ近くの両国で、私どもがいつもお世話になっている耐震ソフトの会社である株式会社インテグラルさんのセミナーがありました。

さすが、耐震ソフトでは日本でも有数の会社さんです。
今年元旦の1月1日に起きた「能登半島地震」の被害調査を行った結果から、被害の分析や今後の我々設計者のあるべき姿、方向性などを教えていただきました。


3部構成になっており、1部はインテグラルの会長さんより「現地調査報告と被害分析」でした。

やはり、実際に現地へ足を運んでの報告と分析には、頭が下がる思いでした。いかに現地の方々が、いまだに我慢を強いて頑張っておられるかが良くわかりました。

能登の住宅は、在来の軸組み工法に加えて伝統工法が多く残っており、風雨や積雪に対応するために、地元の土を使い両面に焼き上げた「能登瓦」と呼ばれる重く強い瓦を多く使用しているようです。
また、日本各地で見られるように高齢化のために十分な耐震化もされていないような住宅も多くみられたそうです。


2部は、東京都市大学の大橋好光教授です。

今回の地震動はM7.6という巨大地震でした。
1983年5月26日に起きた「日本海中部地震」のM7.7に匹敵するような巨大な地震でありました。震源域が帯状に100kmくらいに長く分布しており、南西部と北東部の2つの地震が連動して起きたともいわれているそうです。
兵庫県南部地震と同程度の過去に大被害をもたらした地震動が、各地で観測されたそうです。
建物を破壊する加速度は最大で1500cm/s²であり、速度も最大で100~120cm/sと極めて大きい数値です。

液状化の被害も各地で観測されたそうです。液状化が起きると軽いものは浮き上がって傾き、重いものは傾き沈んでいきます
液状化は震源から離れた地域でも起きるのが特徴的です。
過去には東日本大震災でも、千葉県浦安市や埼玉県栗橋など遠くの地域でも発生しました。

意外だったのは、液状化の上の建物では地震入力(水平力)はむしろ小さいそうです。
これは、建物は傾かせてしまうのですが、上部構造の被害は比較的小さく済んでいるそうです。

また、液状化被害の一番大事なことは「液状化はまた来る」という事だそうです。
今回、液状化した地域は、過去に液状化した地域が多く含まれていたそうです。
液状化マップは多くの自治体で配布しているので、建設地の地盤について設計者は今一度考慮するべきと強く仰ってました。

耐震改修についても、能登市町の耐震化率は、石川県の82%に比べると輪島市の45%、能登町53%、珠洲市51%、穴水町48%と低く、これは高い高齢化率と比例しているそうです。
能登地方だけの問題ではなく、高齢者が多い地方では、年金で暮らす方々は耐震改修まで余裕がありません

全国の耐震化率は2013年に82%とされ、国は「2020年に95%、2025年には耐震性を有しない住宅ストックは概ね解消する」と言っているそうですが、本当にそうなのかと強い口調で仰っておられました。
私も東京の下町で多くの経年した住宅を耐震改修していますが、とても国の言うことは信じられません。

色々と勉強になることや考えさせられることの多い一日でした。

まだまだ書きたい事がありますので、また続きは次回に。

ありがとうございました。

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