水道管にも「耐震化」を

北海道胆振東部地震

北海道胆振東部地震の発生から2週間が経ち、各地での被害が明らかになってきました。

住宅の被害については、地震の揺れ自体での損壊は少なかったものの、札幌市の住宅地では大規模な液状化現象が起き、多くの住宅が大きく傾いてしまいました。

この付近の地盤は、元々谷あいの水田だった場所を埋め立てたもので液状化が起きやすい地質だったようですが、地震前に降り続いていた雨や、地中の水道管の破損も被害を拡大させた原因ではないかといわれています。

出展:【北海道震度7地震】内陸部でなぜ液状化? 札幌市清田区、谷地に盛土 耐震化遅れた水道管も被害拡大 – 産経ニュース

また、今年6月に起きた大阪府北部地震でも、水道管の破損で路面に水が溢れ、高槻市や箕面市などで約9万戸が断水する被害を引き起こしました。

大阪北部地震の大規模断水、老朽水道管が引き金:日本経済新聞

これには戦後1955年から1970年代にかけての高度成長期に埋設された水道管が今も使われ続けているという背景があります。短期間で広範囲にわたり整備されていった水道管は、法定耐用年数である40年を超えても交換が追い付かず、大きな揺れに耐えきれなくなり相次いで破損しているのです。

水道管の耐震化

現在、素材や継ぎ手に改良が加えられ、地震に強く耐久性も向上した「耐震適合管」への交換が全国で進められています。厚生労働省の調査によると、平成28年度末では全国の基幹管路で約39%の水道管の耐震化が完了しているとのことです。

出展:厚生労働省「水道施設の耐震化の推進」

宅地内の水道管の交換は自己負担

このように公道に埋設されている配水管は各自治体で耐震化が進められていますが、住宅においてはどうでしょうか。

実は、私有地内にある水道管は各個人の所有物になるので、各個人の自己負担でメンテナンスを行わなければなりません。そのため、築年数の古い住宅では耐震化されていないものがほとんどであるというのが実情です。

普段は目に見えないのであまり意識することがない場所ではありますが、人間でいえば血管に例えられるのが給排水管です。家の中でお湯や水を血液のように必要な場所に運ぶ重要な部材ですので、いざというときに困らないためにも、正しいメンテナンスを行うことが必要です。

時代によって変化してきた水道管

経年された住宅をリフォームする現場では、普段目にしないようなものも解体することで表面に出てきます。住宅に使われている水道管も、その建てられた年代によって様々です。

古くは自然の勾配を利用して石や木で造られていた水路を流れていた上水道は、圧力をかけて広範囲に配水できるようになり、金属や樹脂製の水道管へと変化していきました。

昭和50年頃までに建てられた住宅では、作業性や当時の技術的な理由で「鉛管」が多く使われていました。鉛管同士の接合は「はんだ付け」のため、接合部からの水漏れや地震などで外れてしまいやすくなっています。また、経年劣化による漏水事例も多く、交換が推奨されています。

そして現在では樹脂管と呼ばれる「ポリ塩化ビニル管」や「架橋ポリエチレン管」が主流です。
私共では、リフォームの際には「架橋ポリエチレン管」を推奨しています。

上の写真は築95年の長屋をリフォームしたお客様の工事中の写真です。
白とピンクのホースのようなものは「さや管」といい、この中に架橋ポリエチレン管を通す「さや管ヘッダー方式」を用いて配管します。柔らかくて曲げやすく、継ぎ手が少なくて済むのでメンテナンス性に優れ、中を通る管の交換も簡単なため、何代にも渡って使用することができます。

このように、各家庭や事業者が給水設備を適宜変えていくことにより、大地震時においても断水の機会が減っていくようになると思います。

床下の配管は目立たない所ですが、大きなリフォームをする際にはご自宅の配管がどうなっているのかチェックしてみることをおすすめします。

タイトルとURLをコピーしました