木造住宅に「制震」が浸透しない理由

制震

前回の記事では、建物を強固に固める「耐震」、ダンパーなどで力を吸収して建物の揺れを抑える「制震」、地面の揺れを建物に伝えないようにする「免震」の3つの違いについてご説明しました。

免震は装置が大掛かりになるため、なかなか一般の住宅に取り入れられることはありませんが、「制震」の考え方は今後木造などの小規模な建物でも積極的に取り入れていくことになるのではと思います。

しかし、建物の地震対策への関心が高まっているにもかかわらず、現状、制震を取り入れる木造住宅はごく少数です。
実は、この制震が住宅の現場で拡がらないのにはある理由があるのです。

複雑な構造計算がネックに

建物の地震に対する強さは、政令で定める基準に従った構造計算により数値化して確かめることになっています。
「耐震」の場合には、まず「許容応力度計算」で、震度5強程度の地震でも損壊しない耐力があるかどうかを確かめます。次に、震度7程度の大きな地震でも家が潰れてしまわないかというのを「水平耐力計算」を用いて確認するという二段階の計算を行い設計します。

それに対して「制震」の場合には「限界耐力計算」という計算方法を用います。
これは上の二つの計算よりもさらに複雑な計算をしなくてはならないため、性能を評価するためのハードルが高く、手軽に取り入れることができないのです。

リフォームの場合は特に工事にかけられる期間や費用も限りがあるので、なかなか制震まで手が回らないというのが正直なところです。

進化する耐震技術

耐震のみを行った家では、地震の力がすべて建物にかかってきますが、制震装置を取り付けた場合には、建物にかかる力をある程度逃すことができます。
そのため、くり返し来る揺れや現行基準を大幅に上回るような大きさと長さの揺れに対しては、免震や制震などの補強法が有効とされています。

現在私どもが行っているのは「耐震」工事がほとんどです。
しかし、熊本地震や先日の北海道の胆振地方の地震など、短期間で大きな地震がくり返しているのを目の当たりにすると、「制震」の重要性を感じずにはいられません。

最近では「収震」という考え方も提唱されています。日々新しい工法や素材が開発されていくため、これからもまだまだ勉強しなくてはなりません。

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