雨漏りは耐震性を下げる原因に

地震と建物を考える

今年も残すところあと1か月を切りました。
この1年を振り返ると、1月に熊本、2月の北海道、7月は山形・新潟と各地で震度6弱~6強の大きな地震が発生しました。これらの地震では幸いにも死者を出すことなく、人的被害や混乱は少なく済みましたが、今年の災害といえば、夏以降の台風や大雨による被害が甚大でした。
これまで「何十年に一度」と言われてきたレベルの雨風が今後もっと頻繁に起こるようになるのではという見通しもあり、耐震性に重点を置かれていた住宅の性能も、風水害に対する備えが改めて注目されてきているように感じます。

今年の台風は広い範囲で被害があったため、お住まいの住宅に雨漏りが発生してしまった方も多くいるのではないでしょうか。
「雨が強く降ると少し染みてくる」という程度ですと、ついついそのまま放っておいてしまいがちですが、雨漏りは気づいたときにすぐに対処することが重要です。
今回は、雨漏りが住宅に及ぼす影響についてお話します。

木造住宅に水は大敵

木造住宅では内部に水が浸入すると、構造体である木材の腐朽の原因となります。湿気を含んだ木には腐朽菌とよばれる菌が繁殖し、木材を腐らせていってしまうのです。
そして、シロアリ被害の大きな原因となるのがこの腐朽した木材。シロアリは腐朽菌を餌にしているため、木材が水分を含んだまま放っておくと、気づいたときには柱がスカスカに…ということになりかねません。

木造だけでなく、鉄骨造でも水分が内部に入り込んでしまうとサビの原因となり、建物の耐震性に影響が出てきます。
建物内に水を浸入させないのはもちろんですが、もし水が入ってしまった場合にはよく乾燥させ、二度と入らないようにすることが大切です。

住宅のシロアリ被害

シロアリの侵入経路は土からです。基礎に蟻道と言われるものを造りながら1年に5センチほど進み、約5年ほどで土台に到達します。
そして土台に到達するとある程度の湿度があれば1階、2階へと食い進んでいきます。

今年行った工事で、食い進んだシロアリが屋根まで到達してしまい、ほとんどの壁と構造体を交換しなければならない事例がありました。
耐震補強に伴う解体で判明したのですが、ここまでひどいと建て直しも視野に入れていかなければなりません。

木造の白蟻被害
▲比較的新しい住宅でしたが、雨漏りによるシロアリ被害で重要な通し柱がボロボロになってしまっていました

雨漏りは建物を劣化させる

木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)で行った耐震診断の調査データによると、1981年~2000年5月以前に建てられた新耐震基準住宅においても、約85%の住宅が「倒壊する可能性がある」または「倒壊する可能性が高い」という診断結果だったそうです。(2018年1月17日 『81-00木造住宅』の耐震性に関する木耐協調査データ発表より)

建築基準法の耐震基準は1981年と2000年に大きな改定があり、震度5強程度の中地震に耐えられるように基準を設けられていた旧耐震基準が、1981年6月以降からは震度6以上の大地震に耐えられることを基準とした新耐震基準になりました。2000年6月からはそこに接合部などの明確な規定が加わり、それが現在の耐震基準になっています。 この1981年の改定から、2000年の改定までの間に建てられた木造住宅が「81-00木造住宅」と呼ばれています。

震度6以上の揺れにも耐えられるよう設計されたはずの81-00木造住宅に、なぜこれだけ多くの割合で倒壊の危険性が指摘されているのかというと、そこには施工の問題の他にも建物の劣化が大きく関わってきていると思います。

雨漏りを見つけたら早めに対処しましょう

建築当初はピカピカだった住宅も、経年によって傷みが生じてきます。その傷みが構造体に出てきてしまうと、基準を満たして建てられた建物の耐力が失われていってしまいます。その傷みの大きな原因の一つが、雨漏りによる水の浸入なのです。

どんなに耐震性能を上げて構造体を補強しても、劣化があっては計算された耐力が出ません。あくまでも劣化がない状態できちんと耐震性能を保たねばならないのです。

もしご自宅で雨漏りしている箇所を発見したら、なるべく早く対処するようにしましょう。

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