耐震等級とは?耐震基準との違いも解説

耐震補強工事地震と建物を考える

(4/27更新:関連記事を追加しました。)

建物の耐震性能を示す指標として「耐震等級」というものがあります。地震に強い建物であるという安心の他にも、等級によっては保険や税金などの優遇を受けられる場合があります。
しかし、その等級の間には具体的にどのような性能の差があるかよく分からないという方が多いのではないでしょうか。
今回は建物の耐震等級について、また、同じようによく耳にする「耐震基準」との違いについてもご説明します。

「耐震等級」と「耐震基準」の違い

耐震等級は住宅の性能表示制度を定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に沿って制定されたもので、建築基準法で定められた耐震基準とは異なります。

現在の耐震基準は1981年6月から適用されたもので、それ以前に使われていた基準と区別するために「新耐震基準」と呼ばれています。建物を建てる際には必ずこの耐震基準を満たさなくてはなりません。
耐震等級が定められた品確法ができたのは2000年のことですので、「耐震等級」をもつ建物はすべて建築基準法の「耐震基準」を満たしていることが大前提となっています。

耐震等級を取得するメリット

建物の建築時には「耐震基準」を満たすことが必須条件ですが、「耐震等級」を定めている住宅性能表示は任意で受ける評価制度のため、必ずしも耐震等級を受ける必要はありません。
しかし、耐震等級の評価書を発行することで受けられるメリットもあります。

耐震等級には1~3まであり、性能としては等級3が最も高いものになります。
高い耐震性能をもつ建物は地震による人命や財産の被害を減らすことができるため、地震が多い日本では耐震等級は安心のための保証になるといえるでしょう。
また、耐震等級が高いほど、地震後の快適性や再利用性が高まります。耐震等級を取得する一番のメリットは、保険料や税金の優遇が受けられるという事です。

等級別の性能

耐震等級1

耐震等級1は、建築基準法の最低限の耐震性能を満たしているものになります。震度6強から7に相当する、数百年に一度起こる大地震に耐えうる強度を持つように構造計算されています。
地震後に大規模な修理が必要ですが、倒壊しないレベルです。

耐震等級2

耐震等級2は、等級1の1.25倍の耐震強度があるものを示します。地震後に一部修理が必要ですが、生活に支障はないレベルです。
保険料や税金の優遇を受けられる「長期優良住宅」として認定されるにはこの耐震等級2以上の強度を持つ必要があります。

耐震等級3

耐震等級1の1.5倍の耐震強度があることを示しています。地震後もほとんど損傷がなく、すぐに生活できるレベルです。
災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署などは、その多くが耐震等級3で建設されています。

耐震等級3の建物は、地震後も建物の価値が下がりませんが、等級2の建物は一部価値が下がり、等級1では大幅な価値の低下となる損傷を受けることになります。
また、保険料や税金の優遇措置は耐震等級2よりも3の建物の方が高い優遇率を受けられる場合が多いです。

耐震等級を上げるにはデメリットも

耐震等級を上げるごとに性能が高くなり、税金などの優遇も受けられるとメリットばかりのように思えますが、デメリットもあります。

  1. 耐震等級が高いほど建築費や維持費が高くなる
    耐震等級を上げるには、耐力壁や筋交いなどの補強材や特殊な工法を用いる必要があるため、建築費や維持費が高くなります。せっかく税金などの優遇を受けられても、その分建築費が高くなって金額的なメリットはほとんどなかったということもありえます。
  2. 間取りなどに制限を受ける場合がある。
    耐震性を上げるために壁や柱を立てることで、かなえたいプランに制限が出ることがあります。開放的な空間を重視して、あえて耐震等級を上げないという選択肢もあります。

住む人を守るための耐震性能

住宅性能表示はあくまでも計算上のものであるため、これだけで日本全国をすべてカバーすることは難しいです。
2016年に発生した熊本地震では、震度7の地震が短期間に2回発生し、新耐震基準の住宅にも倒壊などの被害が及びました。地震後も損傷がないとされる耐震等級3の建物では倒壊はなかったものの、損傷ゼロとはいきませんでした。

しかし、地震後の快適性や再利用性よりも、最終的にご自身やご家族の生命を守るという目的では、高い耐震性能は有効な手だてになります。
耐震等級によって異なるメリット・デメリットを考慮し、ご自身の生活を快適・安全に暮らしていくためにどうすれば良いのか選択していただければと思います。

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