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「制震」についてです。
元旦に起きた「能登半島沖地震」や「熊本地震」でも何度も繰り返す大きな地震に注目されています。現在の建築基準法では、大地震動での倒壊の可能性は、評点1以上で「倒壊しない」とされています。この評点を、推し量るのが「耐震診断」です。
先日ホームページからのお問合せで、木造3階建ての軸組み工法の耐震診断を依頼されました。
きちんとした「構造計算書」もあり「完了検査済証」もある建物です。
建築後10年以上たつが、最近3階にいると揺れるようになったとご不安になり、私どもへの耐震診断のご依頼となりました。
通常の耐震診断である「一般診断」とその一つ上をいく「限界耐力計算」を行うことをおすすめしました。
この「限界耐力計算」は、限界耐力(Ultimate Strength)という、物体や構造物が破壊される直前の最大応力や最大負荷を指します。これを計算する方法は、物体や構造物の形状、材料の特性、および負荷の種類に依存します。
以下では、一般的な限界耐力計算の手法を簡単に説明します。
- 材料特性の把握: まず、対象となる材料の特性を把握する必要があります。これには、材料の引張強さ、圧縮強さ、せん断強さなどが含まれます。
これらの特性は、構造計算書により材料データシートから得ることができます。 - 応力の計算: 物体や構造物にかかる応力を計算します。これは、外部からの負荷によって引き起こされる応力です。応力は、負荷を物体や構造物の断面積で割ることで計算されます。一般的な応力の種類には、引張応力、圧縮応力、せん断応力などがあります。私どもでは、「ホームズ君」というソフトを使用しています。
- 限界耐力の比較: 計算された応力を、材料の限界耐力と比較します。限界耐力は、材料の特性に基づいて事前に決定されます。計算された応力が限界耐力よりも大きい場合、物体や構造物は破壊される可能性があります。
- 安全率の考慮: 多くの場合、実際の設計では、限界耐力に対する安全率が考慮されます。これは、計算された応力が限界耐力の一定の割合以下になるようにすることで、安全性を確保するためです。一般的な安全率は、1.5から2.0の間です。
- 負荷条件の変化: 物体や構造物にかかる負荷が変化する場合、限界耐力も変化します。これを考慮して、異なる負荷条件に対する限界耐力を計算する必要があります。
以上が、限界耐力計算の基本的な手順です。これらの手順を適切に実行することで、物体や構造物が設計基準を満たし、安全性を確保できるようになります。
ここからが、いちばん大事な事柄です。
診断の結果が出て、対策をどうするかという事です。
私どもでは、一般診断と限界耐力計算の結果から「制震装置」を設置することをお勧めしました。
評点を上げることも大事ですが、私どもでは「減衰定数」という評価と「加速度逓減率」という数値もお出しします。
「減衰定数」とは、数値が高いほど揺れを早く抑えることができます。
木造住宅は、しなやかで揺れを抑えやすい構造ですが、現状では「0.09」という数値でした。
これを「制震装置」を組み込むことにより「0.15」に向上し、より早く揺れを抑え建物への負担を軽減します。
また、「加速度逓減率」という数値もお出しします。
加速度逓減率は、100%の地震エネルギーを受けた時の数値が「1.00」です。
木造住宅は吸収性があり、現状「0.79」で地震のエネルギーを21%低減しています。
こちらに「制震装置」を取付ることにより「0.60」に向上して、建物に伝わる地震のエネルギーを40%低減することができます。
耐震診断は、現状を知るための指標です。
診断結果が悪くとも良くとも現状の建物の特性をよく知り、対策を正しくとることが大事です。