耐震工事で屋根を軽くする理由

北海道胆振東部地震

本日9/6未明に、北海道で震度6強の大きな地震がありました。

報道を見る限り、天井・壁の崩落や、土砂崩れ、地面の液状化など大きな被害が確認されています。朝になっても北海道全域で停電が続き、被害にあわれた方は大変な不安の中で過ごされているかと思います。

気象庁の発表によると、まだ今後一週間は震度6強レベルの余震に注意が必要とのことです。最初の揺れに耐えた建物も、大きな揺れが続くことで損傷が広がるおそれもあります。まずは身の安全を確保し、片付け等は急がずに余震が落ち着いてから行ってください。

前回の記事では、地震の際に落ちやすい瓦と、そうでないものについてお話しました。北海道の住宅では、屋根に積もる雪対策で瓦ではなく、金属屋根が一般的となっています。
これだけの強い揺れにもかかわらず、住宅倒壊のニュースが土砂崩れによるもの以外にほとんど報じられないのは、この瓦よりも軽い金属の屋根が一つの要因ではないかと思われます。

エコリフォームでこれまで手掛けてきた耐震工事では、「瓦屋根を軽い素材に葺き替える」という工事を多く行ってきました。そこには地震によって建物にかかる力が大きく関係しているのです。

今回は、建物にかかる力と屋根の重さについて、少し詳しく解説します。

「長い間作用する力」と「たまに発生する力」

建物にかかる力(荷重)は、大きく2つに分けられます。
まずひとつは「長い間その建物にかかる力」と、もうひとつは「たまに発生する力」です。

前者の長い間作用する力は「長期荷重」と呼ばれ、さらに4つに分類されます。

  1. 固定荷重(建物そのものの重さ)
  2. 積載荷重(家具や人など、動かせるものの重さ)
  3. 積雪荷重(寒冷地で屋根の上に積もる雪の重さ)
  4. 特殊荷重(ビルや商業施設で屋上にクレーンなどがある場合)

これらの力はすべて地面に向かって垂直方向にかかっているため、建物はこれに耐えられるような構造になっています。

そして、そこに何年かに一度、自然災害による「たまに発生する力」が加わることがあります。中規模以上の地震や台風、水害、大雪などがこれにあたります。

長期荷重が垂直方向の力であるのに対し、この「たまに発生する力」はあらゆる方向に作用します。そして、この力は、原因となる災害の大きさだけでなく、先にご説明した「長期荷重」の重さによって力の強さが変わってくることになります。

屋根が重いと、揺れが大きくなる

地震で建物が横に揺さぶられると、いつもは地面に向かって垂直に働いている「長期荷重」の力が、突然水平方向の力として作用してしまいます。

更に屋根は、建物を固定している地面(支点)から最も遠い場所にあるため、そこが重ければ重いほど、揺れの力が大きくなってしまうのです。

このように、屋根の重さはそのまま地震の揺れの強さにも関係してくるため、耐震のためには屋根は軽いほうが良いとされています。

正しい設計と施工で安全な暮らしを

地震の揺れに関しては、水平方向の力を考慮すればよいものの、近頃増えてきた異常気象においては、台風や竜巻、ダウンバースト現象の突風における被害も考えなければなりません。

地震に対して有効である軽い素材の屋根材も、施工が不十分であると簡単に吹き上げられてしまいます。また、木造住宅では特に火災に対しても備えが必要です。

建築基準法においては、このような様々な条件に対応し、建物の倒壊や損壊を防いで人命の安全性を確保できるよう、具体的な基準や指針を設けており、地震などで大きな被害が出るたびにその見直しが行われてきました。

築年数が古い建物で建築当初は問題なく建てられたものの、現行の法律に沿っていない建物が多く存在するのはそのためです。

耐震工事を行う際には、現状の建物の状態を把握し、適切な工事をすることが大切です。きちんとした設計のもと、正しく施工された住宅の中で安心して暮らしていただければと思います。

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