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最終更新日:2021/09/27(2016/09/30公開)

いま注目したい漆器の魅力

いま注目したい漆器の魅力

「食欲の秋」という言葉の通り、おいしいものが多い季節。
おいしい料理でお客様をおもてなしする時に、
料理と同じくらいこだわりたいのが食器です。

旬の食材がたくさん手に入ったときなど、友人や親戚を招いて食事会というのも素敵ですね。 でも、食器はついつい、扱いやすさで選んだ洋食器の出番が多くなっていませんか?

そこで注目したいのが漆器です!

「値段が高い」「扱いが難しそう」と敬遠されがちですが、見た目がきれいなだけでなく、保温性や耐久性も抜群の漆器を使わないのはもったいないですよ。

そもそも漆のことをご存じですか?

漆(うるし)とは、漆の木を傷つけたときに滲み出る樹液のことです。

日本では縄文時代から接着剤として使われてきたといわれています。鎌倉時代の遺跡からは大量の漆のお椀や皿が出土しているので、日本人と漆の付き合いは相当長いといえますね。

現在日本で使われている漆の90%以上は中国産で、国内で採取されたものはわずか1~2%ほど。 どうしてこんなに国産が少ないかというと、漆の木の乱伐採や、うるし掻き手の減少などによるものといわれています。

現在、日本の漆の主な産地は岩手県のほか、茨城県、新潟県、栃木県などです。 近年では、国宝や重要文化財の建造物を修理する際、より耐久性の高い国産漆を使うようにするなど、国産漆を保護する取り組みが始まっています。

漆器の魅力とは?

漆器は英語で「japan」と呼ばれることがあり、海外でも人気が高いそう。漆器の魅力についてご紹介します。

料理をおいしい状態で食べられる

漆は断熱性が高いので、熱い汁物を入れても、熱くて持てないということがありません。また、保温性も高いので温かいものを温かいうちにいただけます。

丈夫で長持ちする

漆を何度も塗ることで耐久性がアップし、陶器や磁器に比べて割れたり欠けたりすることが少ないのが特長です。うっかり床などに落として傷がついてしまっても、塗り直してもらえばきれいになります。

長く使うほど艶がでる

ガラスや陶器などの器は買ったばかりの頃が最も美しい状態ですが、漆器は使えば使うほど艶がでて、美しさが増すのが大きな特長です。漆器は高価なものなので、お正月やおもてなし用にしたくなりますが、毎日の食事などで日常使いする方が良さを堪能できるのです。

漆器の上手なお手入れ方法

漆器=お手入れが面倒と思われている方も多いかもしれません。でも、漆器はもともと日用品です。特別なことをするというより、いつもより少し丁寧に...を心がければ十分です。

洗い方

漆器は表面がツルツルしているので水洗いだけでも汚れが落ちますが、油物を入れたときは食器洗い洗剤とスポンジで洗います。ただし陶磁器やナイフなどと一緒に洗うと、ぶつかって傷がつくことがあるので、できれば漆器だけを別にして洗った方がいいでしょう。

食器洗い乾燥器は、漆器の塗りや木地に影響がでる恐れがあるので避けてください。洗った後は乾拭きすることをおすすめします。

しまい方

直射日光に当たると劣化してしまうので、日の当たらない棚などに保管します。このとき、陶磁器や金属の食器と重ねると、傷の原因になるので避けてください。

重箱などあまり使わないものは、薄い布や柔らかい紙で包み、箱に入れておきましょう。何年も使わないと漆器が乾燥して傷みやすくなるので、ときどきは出して使った方がいいようです。

買ったばかりの漆器がにおうときは...

塗り上がって時間が経ってない場合は、漆のにおいが気になることがあります。そんなときは、直射日光のあたらない風通しのいい場所に1~2週間おいておけば、においがとれます。早く使いたい場合は、お酢を柔らかい布などにしみこませて拭き、ぬるま湯で流すといいそうです。

日本全国のさまざまな漆器

ひとくちに漆器といっても、産地によって特徴はさまざま。日本では北から南まで、全国でさまざまな種類の漆器が作られています。

◎津軽塗(青森県)

唐塗、ななこ塗、紋紗塗、錦塗に代表される「研ぎ出し変わり塗り」が特徴の日本最北端の漆器産地です。

◎川連漆器(秋田県)

柿渋と生漆を直接塗っては研ぎを繰り返す技法が特徴。仕上げの「花塗り」には刷毛の跡を残さず漆を均等に塗る職人技が光ります。

◎鳴子漆器(宮城県)

江戸時代に湯治客向けのお土産物として作られたのが始まりといわれています。ケヤキを使う木地呂塗は年月を経るにつれケヤキの木目が美しくあらわれてきます。

◎会津塗(福島県)

会津領主の蒲生氏郷公が産業として奨励し、一大産地にまでなりました。幕末の戊辰戦争で壊滅液な打撃を受けますが、明治の中期に日本有数の漆器の産地として返り咲きました。

◎江戸漆器(東京都)

400年前、江戸築城に伴い場内に設けられた御細工場(おさいくば)を中心に、京都などから漆工が集まり発展しました。

◎木曽漆器(長野県)

中山道を行き交う人々によって、木曽ヒノキなどを用いた庶民のための漆器として育まれました。現在は漆器のほか、文化財の補修などにも取り組んでいます。

◎新潟漆器(新潟県)

新潟では約360年前の元和時代から漆器作りが行われていたそうです。会津や輪島の技術を取り入れ、さらに発展したといわれています。

◎村上堆朱(むらかみついしゅ)(新潟県)

約600年前、城下町の村上に寺院建築のためにやってきた漆工から伝えられたといわれています。使い込むほどに鮮やかな朱色を見せ、艶も増します。

◎高岡漆器(富山県)

江戸時代の初期、加賀藩主・前田利長公が、簞笥や膳などの日用品を作らせたのが始まりといわれています。その後、中国から伝えられた技法によって、彫刻絵などの多彩な技術が生み出されました。

◎輪島塗(石川県)

堅牢な下地塗りが特色の輪島塗。蒔絵などの技法も優れ、全国漆器産地の中で唯一、重要無形文化財の指定を受けています。

◎山中漆器(石川県)

安土桃山時代に始まったといわれる山中漆器。江戸時代には塗りや蒔絵の技術を活かして茶道具を多く作っていました。昭和に入ってからは安価で丈夫な近代漆器を導入しています。

◎越前漆器(福井県)

越前漆器は1500年の歴史を持ち、刷毛の跡やほこりがつかないように仕上げの漆を塗り、そのまま乾燥させる「花塗」という技法が特徴です。

◎紀州漆器(和歌山県)

室町時代、紀州木地師によって渋地椀が作られたのが始まりといわれています。紀州産のヒノキを木地とした曲物や居板物などがよく知られています。

◎香川漆器(香川県)

昭和51年に「存清」「彫漆」をはじめとした5つの技法が四国で初めて、国の伝統的工芸品の指定を受けた香川漆器。盆、茶托、座卓など多くの種類の製品を生産しています。

◎宮崎漆器(宮崎県)

太平洋戦争末期に沖縄から移住してきた漆職人によって始められた宮崎漆器。琉球漆器の流れを汲んだ鮮やかな朱塗や、ハイビスカスなどの南国的絵柄が特徴です。

◎琉球漆器(沖縄県)

木地にデイゴやシマタキを使用しすることにより、どんな気候でも反ったりせずに安心して使えます。下地に豚の血を使用して接着を強くする技法が特徴です。

昔から日本人の暮らしに欠かせなかった漆器。

確かに高価ですが、何十年も使い続けられることを考えると贅沢品とは言いきれません。

しまい込んでいる漆器があったら、ぜひ棚から出して、毎日の食事に使ってみてくださいね。

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