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地震と建物

最終更新日:2021/07/02

老朽化した古い家でも、耐震補強はできますか?

築50年の家に住んでいます。

家がだいぶ老朽化し、最近は地震も多いので、不安を感じています。 古い家ですが、愛着があるので、できれば耐震補強して住み続けたいと思いますが、可能でしょうか?

費用もかなりかかるのではないかと心配です。

(江戸川区・M様)

古い家の耐震補強に関するご質問ですね。

一級建築士・耐震設計士の塩谷敏雄がお答えします。

塩谷敏雄プロフィール

古い家でも耐震補強は可能ですが、どのレベルまで補強するかはご要望次第です。

ポイント

  • まず建物の素性と現状を把握しましょう。
  • この先、暮らしていく期間も考慮に入れた計画を。
  • 費用は計画次第です。助成金も利用しましょう。

耐震リフォームの流れ

耐震リフォームの際は、まず耐震診断を行い、その結果を元に補強計画を立て、計画に沿って工事を進めます。

老朽化したお住まいでは、基礎や土台、柱などの構造部分に劣化がないかを確認し、劣化している場合は交換または補強を行う必要があります。 劣化した部分に耐震金物を設置しても、大きな地震の揺れには耐えられないのです。

このように、より大規模な耐震リフォームが必要とはなりますが、古い家であっても耐震補強をすることは可能です。

耐震リフォームについて詳しくは、下記のページをご覧ください。

耐震リフォームとは?

建物の素性

建物の素性、つまり、建築された時の状態によって、耐震工事の内容は変わります。 新しければ大丈夫、古い家だったら危険、とは限りません。

古い家でも、きちんとした大工さんがきちんと建てた家だったので、それほど大がかりな工事は必要でなかったケースもあります。 逆に、築20年ほどの新しい家でも、手抜き工事が行われていたために、あちこち補修しなければならなかったケースもあります。

もともと建売住宅として造られたのか、注文住宅だったのかによっても、耐震性が異なる場合もあります。 中古住宅を購入して耐震補強する計画の方は要注意です。

日本舞踊の稽古場を、雰囲気そのままに耐震リフォーム。素性のはっきりした建物です。(墨田区・K様のリフォーム事例より)

築年数の長い建物では...

古い家だから危険とは言い切れないものの、築50年、60年が経過しているような場合は、やはりそれ相応の規模の工事が必要です。

例えば、コンクリートの「布基礎」は、1971年(昭和46年)改正の建築基準法で義務化されましたが、それ以前は、石の上に柱を建てる「礎石建て」の建物もよく見られました。 耐震性を考えると布基礎に改修することが望ましいのですが、基礎全体を改修するとなると、かなり大規模な工事となってしまいます。

大きな地震が起こるたびに、建築基準法が改定され、住宅の耐震基準もより厳しいものへと変わってきました。 築年数の長い建物は古い耐震基準で建てられているため、最近の住宅と比較するとどうしても耐震性が低いものが多くなっています。

築52年の木造住宅。1階のみスケルトンリフォームにして、基礎をしっかり補強しました。(荒川区・S様のリフォーム事例より)

建物の現在の状態も重要

また、これまで暮らしてきて、メンテナンスをしていたかどうかによって、現在の家の状態は違ってきます。 建物の現状も、耐震工事の内容に影響があります。

経年したメンテナンス不足の家でよく見られるのは、シロアリ被害です。 雨漏りや水もれ、家の劣化などを放置した結果、構造部分の木材が腐り、シロアリの発生を招くのです。 シロアリ被害があると、家の耐久性は著しく低下します。

まめにメンテナンスを行い、きちんと点検、防蟻処理していれば、シロアリ被害を避けることができます。 「知らないうちにシロアリ被害が進行していた...」とならないよう、ふだんからしっかりメンテナンスしておくことも重要です。

シロアリについては下記のQ&Aも合わせてご覧ください。

柱がシロアリ被害にあっているようです。補修・補強を行うべきですか?

シロアリ被害で柱がボロボロに。これでは耐震性も著しく低下してしまいます。(渋谷区・O様のリフォーム事例より)

この先、いつまで住み続けるか

建物の素性と現状がわかったところで、お客様がこの先どのくらいの期間、その建物に住もうと考えているかという点も考える必要があります。

例えば、20年、30年と住んでいきたいなら、構造からしっかり見直すスケルトンリフォームをオススメします。 耐震補強だけでなく、設備や間取りを見直し、断熱性を高めて、長く快適に暮らせるようにすることも可能です。

一方で、古い家なので近々建て直すつもりだったり、数年後には引っ越しを予定している、という方もいらっしゃるでしょう。 こういう場合は、一部屋を重点的に補強してシェルター化したり、万が一の時の避難経路を確保するなど、ポイントを絞った耐震リフォームの方が適しています。

一部屋を耐震補強して、いざという時はシェルターとして使えるようにリフォームしました。(文京区・T様のリフォーム事例より)

耐震補強にかかる費用は?

これまで解説してきたように、どのような耐震工事を行うかは、様々な要因によって変わってきます。 まずは耐震診断を行い、診断結果とご要望を照らし合わせて、補強計画を立てていく必要があります。

補強計画によって費用は異なるため、一概に高い、安いと言うことはできません。 これまでに行ってきた耐震リフォームの費用も、100万円~500万円と、大きく幅があります。 また、スケルトンリフォームでは1000万円、2000万円という費用がかかることもあります。

耐震補強にかかる費用については、下記のQ&Aも参考にしてください。

木造住宅の耐震補強をしたいのですが、あまり費用がありません。

内装にかける費用を抑え、土台や柱を交換して予算内で耐震補強が可能に。(墨田区・U様のリフォーム事例より)

助成金の利用も検討を

1981年(昭和56年)に建築基準法が改正され、耐震基準も大きく変わりました。 1981年以前の基準が「旧耐震基準」、以降が「新耐震基準」とも呼ばれますが、築40年を超える建物は、旧耐震基準で建てられていることになります。

旧耐震基準の建物の多くは、老朽化も相まって、大きな地震の際に倒壊する可能性が高くなっています。 建物倒壊による被害を減らすため、各自治体は助成金制度を設けて、旧耐震基準住宅の耐震化を積極的に進めています。

例えば、住宅密集地の多い東京23区では、すべての区に耐震助成金制度があり、耐震診断や耐震補強計画、耐震補強工事に対してそれぞれ助成金が支給されます。

詳細な条件は自治体によって異なりますが、旧耐震基準で建てられた建物にお住まいなら、助成対象となる可能性が高いので、お住まいの自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

なお、東京23区の耐震助成金制度については、こちらにまとめています。23区内にお住まいの方は、ぜひご活用ください。

東京23区のリフォーム助成金情報

区の助成金を活用して耐震リフォームを行い、安心して暮らせるお住まいに。(墨田区・N様のリフォーム事例より)

外壁のヒビに注意

外壁のヒビを確認すれば、建物の劣化度をある程度知ることができます。 細かなヒビならそれほど心配ありませんが、0.5~1mmほどのヒビが入っている場合は注意が必要です。

詳しくは下記の動画をご覧ください。

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