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地震と建物

最終更新日:2021/07/02

制震ダンパーとはどのようなものですか?

中央区の木造住宅を耐震リフォームしようと思い、インターネットで情報を集めています。

耐震には「制震ダンパー」が効果的だと聞きました。 制震ダンパーとは、どのようなものでしょうか?

(中央区・I様)

制震ダンパーに関するご質問ですね。

一級建築士・耐震設計士の塩谷敏雄がお答えします。

塩谷敏雄プロフィール

制震ダンパーは、粘弾性ゴムや油圧を使った器具で、地震の揺れを分散する装置です。

ポイント

  • 制震ダンパーは木造住宅に取り付けられる制震装置です。
  • 制震ダンパーの一種、仕口ダンパーについて解説します。
  • 制震ダンパー設置の際は注意点があります。

制震とは?

「耐震」は文字通り「建物が地震に耐える」ようにすることです。「制震」も、地震に強い安全な住まいにするという目的は同じですが、その方法が少し異なります。

制震では、地震の揺れを吸収すると同時に、地震の力を他の力に変えることで、建物の崩壊を防ぎます。 何度も繰り返される揺れを押さえ、構造体(建物)を損傷させる力を弱めることで、建物を守るのです。

2016年に発生した熊本地震では、震度7という非常に強い前震から28時間後に、同じく震度7を記録する本震がありました。 前震では倒壊を免れた住宅が、本震で全壊してしまった例に見られるように、通常の耐震補強では強い揺れが繰り返しきた場合に耐えられないことがあります。

制震は地震の揺れと力を軽減するため、熊本地震のように連続して起こる地震にも、より強い建物にできると言えます。 耐震と制震の違いについては、下記のQ&Aもご参照ください。

「耐震」「制震」「免震」の違いは?

1階が車庫になっている3階建て住宅。柱と壁を新設し、車庫の入り口に仕口ダンパーを設置して補強しました。(大田区・H様のリフォーム事例より)

制震ダンパーは木造住宅に取り付け可能

制震のためには、建物の構造部分に制振装置を取り付ける必要があります。 制震装置には様々なものがありますが、多くは大規模で高価なため、ビルやマンションなどに導入される例がほとんどです。

その中で「制震ダンパー」は、一般の木造住宅でも取り付けが可能な制震装置です。 制震ダンパーには粘弾性ゴムや油圧が使われていて、地震の際にしなやかに動き、地震の力を弱めて揺れを分散させることができます。

「リフォームで制震の考え方を取り入れた制震住宅にしたい」とお考えの方は、下記のQ&Aをご覧ください。

リフォームで制震住宅にすることは可能ですか?

また、制震ダンパー以外に、制震ブレースも一般の住宅に設置することが可能です。こちらのQ&Aもあわせてご確認ください。

制震ブレースとはどんなものですか?

1階部分を重点的に耐震補強した木造住宅です。要所要所に制震ブレースと制震ダンパーを設置して補強しました。(文京区・F様のリフォーム事例より)

仕口ダンパーとは?

住宅に取付可能な制震ダンパーにはいくつかの種類がありますが、エコリフォームでよく採用しているのが「仕口ダンパー」です。

仕口ダンパーは、2枚の三角形の金物に粘弾性のゴムを挟み、張りあわせた形をしています。 木造住宅の梁と柱の交点の部分を「仕口」と言い、この仕口に施工するための制震装置なので、仕口ダンパーという名前が付いています。

仕口ダンパーは、仕口部分にやたらに取り付ければいいというものではありません。 建物の出入口や大きな窓などの開口部を仕口ダンパーで補強することで、大きな地震の際に非常口として機能するようになります。

都心でよく見られる、1階が駐車場になっているピロティ構造の住宅の駐車場出入口に取り付けたり、商店などに使われていた建物の広い玄関部分などに設置するのがオススメです。

仕口ダンパーについては、リフォーム自然素材で詳しくご紹介しています。

仕口ダンパー

1階のビルトインガレージを補強するため、入り口の2か所に制震ダンパーを設置。安心して暮らせるお住まいになりました。(江東区・S様のリフォーム事例より)

制震ダンパーを設置する際の注意点

制震ダンパーは、地震の揺れを吸収する優れた機能がありますが、正しい箇所に正しく施工をしなければ、効果を発揮することはありません。 制震ダンパーの施工を希望される場合は、耐震・制震に詳しい業者に依頼するようにしましょう。

大きな地震に対する備えとしては、制震ダンパーだけでは不十分です。 いざという時に家族の命を守れる住まいにするために、耐震金物を使って構造を補強するなど、建物全体をトータルに考えた耐震・制震の計画を立てることをオススメします。

耐震リフォームの具体的な方法については、下記のページで解説しています。

耐震リフォームの方法

また、地震と建物を考えるブログでは、制震の考え方が浸透しない理由を考察しています。制震に興味をお持ちの方はご一読ください。

木造住宅に「制震」が浸透しない理由

1階が車庫になっているピロティ形式の住宅に、3種類の制震ダンパーを設置して補強し、耐震性がアップしました。(世田谷区・T様のリフォーム事例より)

耐震金物を知る

制震ダンパーを中心とした耐震金物について、動画で解説します。こちらもあわせてご覧ください。

耐震金物「筋交いプレート」や「ホールダウン金物」は、地震の際、どのように働くのでしょうか。

詳しくは下記の動画をご覧ください。

エコリフォームのリフォーム事例から、制震ダンパーを採用した事例をご紹介します。

壁が少ないために耐震性が低かったお住まい。玄関横の窓を縮小して壁を増やし、玄関上部に仕口ダンパーを取り付けました。 (墨田区・N様のリフォーム事例より)

工場のため、開口部が広く壁が少ない建物です。内側に制震ダンパー、外側に制震ブレースを設置しました。 (新宿区・青谷製作所様のリフォーム事例より)

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